H.A.S.Market - 建築家長谷部勉の一級建築士事務所「H.A.S.Market」

Works

# SOH 開かれた場をつなぐ家(潮見台の家)

個人住宅

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COMMENT

敷地・環境等の条件
敷地は、新興住宅地として開発された場の一角にある。かつては生産緑地であったため、地形は微小な起伏に富み、様々な樹木が生産され緑豊かな場所であったようだが、今は一部にその名残を確認できるに過ぎない。計画開始時、周囲には家屋が少なく、隣地はいずれも更地であった為、既存の相隣環境の様相を計り、それとの関係の中で計画のあり方を探るといった方法は採ることが出来なかった。

建主の要望
最初に「さっき土地を買ったので、設計の依頼をしたい。」と電話で問い合わせがあり、その足ですぐにご夫婦揃って来訪された。写真等でこれまでの作品・事例を紹介し、住宅の様々な可能性について話をしたのだが、驚いたことにその場で契約をしたいという。滅多にある事ではない話に「少し考えられたほうが良いのでは?・・・・」とこちらがその熱を静めるということがあったほど、御二人は家を建てる事の希望に胸を膨らませていた。
ご夫妻共働きで共に活力があり、双方ともバイクを愛用していることから、バイクを置ける広い玄関と軒下空間が求められた。これらに加え、中庭とつながるような明るく開放的な浴室、くつろげるリビング、間仕切りが少なく、広がりを感じられる室内空間等が希望としてあがっていた。また、道路の対岸にある舞台装置の工場はその喧騒が目障りという理由からあまり見たくないとの話をされていた。

提案のポイント
打合せの度に朴訥で屈託無く素直に色々な話をされるお二人の気質に触れるにつけ、この夫妻は、まだ会った事も無い御近所とも、そのバイタリティできっとうまく御付き合いができるに違いないと確信するに至った。要望にもあった中庭を設け、プライバシイに配慮した計画案も別に考えていたが、並行して進めていたこの計画の方を推奨案として提示したのは、この気質の捉え方によるところが大きい。
計画開始時は更地であったが、幸いにして、相隣の住宅がどんな間取りと配置で建てようとしているのかが想定された情報が入手出来た為、計画はそのプロットから始めることにした。
建売住宅から注文住宅、どんな住宅にも開放的にしたいと考え設営された場がある。特に日本においては南面信仰があることから南に向いてこれらのスペースが設けられていることがほとんどで、相隣の家屋も例に漏れずその間取りによって建とうとしていた。テラス、バルコニー、デッキ、庭、などと名づけられる事が多いこれらの空地は、外部空間、もしくは外部との関わりを望んでいる、言ってみれば“開かれた場”ということも出来よう。上述のプロットにより敷地北東側と南西側にはこの開かれた場が大きく発生するであろう事がわかった。実際には駐車スペースを併用するケースがほとんどであるが、街並みの中ではVOID(空地)として、あるいは小さなパブリックスペースとして存在することになる。玄関の土間空間を大きく採り、居室を横断させるように設けたのは、前述のバイク置場という要望に応えるものであると共に、これらの開かれた場を繋ぐような計画のあり方を模索した結果でもある。このつながりが立体的に波及するよう2階の床をスキップフロア状にし、上下の視線がつながる隙間を設け、気配が伝わる様な構成をとった。最上部に浴室を設けたのは、開かれた場からの距離に配慮してのことであったが、南側に配置し、全面をガラス張りにすることにより、光のコアのような存在となり、距離への配慮とは逆に、この住宅の開放性を象徴するような場となった。“開かれた場を繋ぐ”というこの計画に込められたテーマが、建主の開放的な気質と相まって、現実のものになることを願ってやまない。

DETAIL

設計者 H.A.S.Market
所在地 神奈川県川崎市
竣工 2007年4月
主要用途 専用住宅
主体構造 木造(在来工法)
敷地面積 126.72㎡
延床面積 93.86㎡ (約28.3坪)
階数 地上2階
業務内容 設計・監理
施工者 株式会社 宍戸工務店
撮影 田中宏明

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Tel.03-6801-8777

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