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桜台の家

住宅

敷地のある桜台は住宅地としてすでに成熟しており、老若男女が恒常的に暮らし、世代間の偏りもなく気軽に声を掛け合うような風情が残っているという。新興住宅街では決して獲得できないその資質を施主は大いに気に入っていた。生活をワイルドに、かつ積極的に楽しむ事を座右の銘にしているような施主は、かねてよりこの地に暮らし、徒歩圏内に土地を求めた。
4m以下の道路、1つの宅地が二分割された土地で、間口4.5m、奥行き16.5m、典型的な狭小地だが、周囲には豊かに育った他の家の庭木があり、比較的閑静な様相であった。
天空率緩和を活用し、敷地いっぱいに建物を構築、建蔽率から除外される分を中庭として住空間に取り込み、その囲われた屋外空間に階段や廊下といった動線を配置するという構成としている。
安藤忠雄氏設計の住吉の長屋に代表される構成で、雨に濡れないと他の部屋に行けないというものだ。それ自体はさして稀なものではないが、実際にそれを許容し、楽しもうとする施主の好奇心には、頭が下がる。今回の計画では、建蔽率の厳しさと、各諸室のスペースとしてのまとまりとその有効性とが天秤に賭けられ、結果的に動線が屋外に出たわけだが、この空間の有り様がこの家の生活に多様な彩りを与え、決定づけていく核となるような気がしている。
スペース効率を考えざるを得ない条件の中で、短い距離と最小限の動線面積で中庭を介する二つの屋内諸室群を繋ごうとすると、スキップフロアが最も効率が良い。結果的に半地下の寝室、中二階の子供室、屋上テラスが、中庭を介してリビング・玄関・浴室側と半階ズレながら繋がる構成となった。
このズレを意識的に扱い、開放度の異なる場を設営する事を考えた。これは施主が望んでいる家での生活像、「いつも団らんでベッタリではなく、家族が各々勝手気ままに家での暮らしを楽しんでいる。それでいて互いの様子が伺い知れる。」というものを具現化するのに有効に働くと思えたからだ。
清家清氏設計の住宅に通底する概念に似たものだが、ここでは、中庭を介して離れとなる諸室間に、明度・温度・湿度・気流等、気候の違いを付与する事、天候や季節により、その違いがより顕著に立ち現れる環境が備えられている事が、場の違いを身体的に体感出来、過ごし方の選択肢を広げ、家での暮らしをより豊かなものにすると考えた。また、こうした異なる開放度の設営が、満を持して戸建て住宅を所有する決断をし、土地の上に暮らす事を選択した施主の願いをかなえる事にも繋がってほしいと思っている。
ここで取り上げた二人の巨匠が立ち上げた概念は、住宅の設計をしている中で常に脳裏にあったものだが、案の説明や打合せの際に、実際にそれを意識し、対峙させることが出来たのは、大変幸せな経験であった。
この家の存在が、施主の好奇心を拡張し、積極性を助長するものになる事を願ってやまない。
プロデュースザ・ハウス
設計者H.A.S.Market
所在地東京都練馬区
竣工2011年6月30日
主要用途住宅
主体構造木造(在来工法)
敷地面積77.15u
延床面積88.04u
(約26.6坪)
階数地上2階
業務内容設計・監理
施工者宮建ハウジング株式会社
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