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徳佐S邸新築工事

住宅

テラス内観
テラス内観
山口市街より、茨 津和野方面に車を走らせ約30分。徳佐が峰の頂を望むその車窓には、穏やかな田舎の風景が広がっている。目に飛び込んでくる建築群には、はっきりとした特徴が見て取れる。赤茶色の赤州瓦の屋根、土壁、焼き杉の板壁等。この形式ともいえる風景の構成要素は、この地で建てるかぎりにおいては大切にし、周囲のコンテクストから逸脱したものを作るのはやめたいと直感した。
敷地には古いながらも、とても趣のある家が建っており、施主はそこで幼少の頃を過ごしたという。中には日本家屋の伝統と、当時の大工さんによる洋風の具現化に対する愛らしい創意工夫が随所に見られ、土地の水はけの悪さによる腐食化、老朽化といった問題がなければ建て替える必然がないほど力強いものであった。梁が直接建具の鴨居となり、そこにかかる根太が天井の竿縁になるという極めてプリミティブな構成と、黒光りしたそれらの構成材が、施主にとっての家のイメージを堅固なものにしているという事が伝わってきた。
新しいものにしたいという私と施主の漠然とした願望、家に対する施主の原風景、土地の記憶とコンテクスト、プリミティブな構成、別荘としての非日常性、生活空間としての利便性。これらが融合して、ひとつに結実した家。それがこの家の目指すべき姿であった。
単純な合理性の中に、非合理な要素を挿入することで、日常性と非日常性の双方を獲得することを模索している。中廊下を持ったプランは、コンパクトにスペースを確保するとともに、動線が単純になり、利便性が向上すると考え、採択している。その中にテラスと称する半戸外のスペースを介在させ、南北に貫かれる場面を与えるとともに、屋根には半透明の波板を葺き、天空の様子をうかがい知られる空間として、寝室に至る廊下の上を覆っている。非合理的なスペースでありながら、差し込まれた光が包むこの空間は、いつしかこの家の生活の根幹をなす中心的なスペースとして、その存在を確固たるものにするだろうと考えている。

リビング廊下内観
リビング廊下内観
北西側外観
北西側外観
設計者鈴木義一
所在地山口県阿武隈郡
竣工1998年8月
主要用途住宅
主体構造木造
延床面積137.88u
(約41.7坪)
階数地上1階
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