2016年10月24日

平成28年度一級建築士設計製図の試験雑感

今年の一級建築士設計製図の試験は建築物の空間構成を崩すさまざまな要素を適切に処理し建物全体をまとめあげる計画力が特に求められたように思う。当たり前のことだかこれは国が合否の判定基準として明示している「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」の有無とも連動する。
上述した要素の中でも特に影響が大きかったのは吹抜け等とアプローチの考え方の2つ。もう1つ加えるとしたら屋上広場の「直径10mの円」だろうか。それ以外にもたくさん見受けられがここではその3つについて書きとめる。
まずは吹抜け等。課題文に物理的な指定がある訳ではないので設けなければ平面的なゆとりもできるし計画はしやすい。しかし課題発表時の註釈「パッシブデザインを積極的に取り入れた建築物の計画」や課題文の冒頭に書かれた「環境負荷低減のため、自然エネルギーを利用し、快適な室内環境が得られるような設計手法(パッシブデザイン)を、積極的に取り入れる」同じく計画に当たっての留意事項に書かれた「自然採光及び自然換気を積極的に取り入れる計画とするとともに、日射の遮蔽にも配慮する。」から庇等による日射の管理は言うまでもなく通風や熱移動及び排熱のコントロールも考えるとやはり光庭あるいは3層吹抜け+屋上の開閉式窓は外せない要素になっているのではないかと思う。庇を設けただけでも良いかもしれないが競争試験だと考えるとやはり弱い。
次にアプローチの考えた方。敷地図に記載された北側と東側の歩道付き16m道路から判断する限りメインアプローチはそのどちらからでも良いと思えるが計画の要点等の記述における「小学校、公園等の周辺環境を踏まえた建築物の配置計画について考慮したこと」や使い易い計画であることも含めて考えるとやはり長辺が接する道路側の中央からとなる。また課題文に書かれた保育所部門の特記事項には「エントランスホールから保育所玄関を経由して、アクセスできるようにする。」と明示され保育所玄関の特記事項には「保育所部門専用とし、乳幼児の保護者が送り迎えを行う。」と書かれていることから保育所部門のアプローチはエントランスホールからのアクセスが取れていれば東側からの直接アプローチの方が適切であると思う。ただしその場合には保育所玄関は東側に寄ることになるので全体構成が崩れないように配慮しなければならない。東側からのアプローチを取らなければエントランスホールも建物中央になり構成は崩れ難くなるのでその辺りも含めて全体を考えた判断が必要になったと思われる。おそらく受験生の解答はその殆どがエントランスホールからのアプローチのみになっていると思われるので東側直接アプローチの計画ではエントランスホールからのアクセスはサブ的に考えても良いだろう。ちなみにダブルアクセスに応じた広さの保育所玄関を設けた場合は保育所部門が2層になったり保育室が西側に向いたりすると思う(保育所部門が2層になることや保育室が西側に向くことが悪い訳でもないが)しそれはそれで良いと思う。また児童館・子育て支援部門のアプローチは「エントランスホールから受付を経由して、アクセスできるようにする。」と書かれていることから事務室②は必ずしも1階にある必要は無く保育所部門を1階にフロアゾーニングすることによりタイトになりがちなエントランスホールにゆとりを持たせるために1階には受付だけを設置し事務室②は2階に計画する方がまとまり易かったように思う。
最後に屋上広場に要求された直径10mの内接円だかこれにより屋上広場は普通に考えると4グリッドで構成され2階の計画に大きな影響を与えることになる。それにより建物の内部構成が崩れる位なら内接円の確保よりも全体構成を優先するべきであろう。
その他に「計画上留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示する。」などヘビーな要求もあり前述した要素を素早く組み上げエスキスそながら全体を俯瞰し時間をクレバーにコントロールしなければ理想的な解答をつくることが困難だったに違いない。思考が浅くそれらの要素を適切に扱わなかった人には簡単に思える試験だったかもしれないが気付かないまま合格図面が描ける程試験は甘くない。例えたまたま合格図面風なものが描けたとしても良くみれば能力が判定できる様々な要素を適切に処理する能力が試された良い試験だった様に思う。
時間が不足して図面に補足が書ききれなかった方も図面だけで伝われば要求はあくまでも補足なのでそれ程ナーバスになる必要はない。
なおこれは資格スクールの発表の様に綿密な分析をしたものでもないし極めて個人的な雑感である。いづれにしてもあとは12月15日(木)の試験元の発表を待つのみ。本年度受験された方はお疲れ様でした。
長谷部勉
投稿者 長谷部 :