2016年1月10日

鎌倉腰越の家(設計:田井勝馬建築設計工房)

田井勝馬(田井勝馬建築設計工房)さんが設計された住宅「鎌倉腰越の家」のオープンハウスに伺った。住宅設計業界に身を置く我々でも他人が設計した住宅を見学する機会はそれほど多く無い。常日頃から住宅を設計する際に優れた事例を体験することは大きなアドバンテージになると考えているので、お誘いいただけたのは大変ありがたいことだ。そんな訳で敷地は鎌倉と少しだけ遠方だったが業務と天秤に掛けながら重い腰を上げた。

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南側斜面にひな壇造成された土地は、通風、日照、景観等、住むための環境がとても良好である場合が多い。一通り空間を体験させていただき、まず思ったのは今回の住宅は上述した敷地特性を十分に活かしていたということであった。しかも片瀬山であることから湘南海岸まで見渡せる。建物が無かった時その地を訪れた人はおそらくそのひな壇に腰を掛けて眼下を見ながら暫く佇むことになるだろう。それほど気持ちが良さそうな場所に、建てられたものであった。
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設計プロセスとしてはまず敷地特性を活かすためにフロアを段状に配し、内部化する為に大きな屋根を掛けたのだろうと想像した。その屋根は外性を担保し周辺環境を保存するために山の形状を妨げることが無い位置まで持ち上げられていた。外性を保つだけなら内部化するため設けた屋根と床は透明ガラスの壁で繋ぐことになるはずだか、そこに不透明な壁を配しているのが田井さんらしい丁寧な設計であった。流石にスケスケでは生活出来ないだろうし、構造的にも必要にはなるであろうが。
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内部はワンルームに近いおおらかな空間構成だが、様々な床レヴェルと形状が用意されているので、外界の環境を勘案しながら住まい手は個々に自分の好きな位置を見つけ領域をつくりながら生活することになると思われる。内側に向かう視線や領域の獲得方法もそれらのズレを利用しながらの緩やかなものになるだろう。
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谷線側のみならず尾根側への抜けへの配慮もまた秀逸であった。等高線を読み解く事によりこの住宅が出来上がったことが窺い知れる。複雑な地形であることから他にも様々なパラメーターが存在するであろうが、田井さんのコンテキスチャリズムにより見事に解かれていたように思う。粘り強く深く考えることがあらためて重要だと思った。頭で考えるだけではなく、身体とともに思考した住宅に思えた。貴重な体験をいただきありがとうございました。
長谷部勉
投稿者 長谷部 : 2016年1月10日 17:20