2015年8月31日

ホテルオークラ最後の日

2015年8月31日。ホテルオークラ本館は開業から54年を経て最後の営業日を終えました。ボクが訪れた日は最後の週末ということもあり、別れを惜しむ方々が沢山いらっしゃっていました。空間のヴォリュームに対してやや飽和気味な感もありましたが、沢山の方がその空間を愛した証しだと思います。あらためて愛される建築物の素晴らしさを体験したそんな一日でした。

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ボクのオークラデビューは1988年の冬だったと記憶しています。思い起こすと当時学生だったボクのエスキスを指導してくださった先生の「高い(値段の)コーヒーを飲め」というコトバに反応しての行動でした。良質な空間を体験することにより設計のヒントを掴かみなさいという思いをそんなコトバに変換してご指導いただいたコトを今も鮮明に覚えています。
また1990年代前半には所属していた設計事務所のボスに何度か連れていっていただきました。当時のボスはホテルオークラがとても好きでした。5階にあったメインバー「オーキッドバー」でバランタイン30年をガブ飲みしすぎて怒られた記憶が蘇ります。高級なお酒だから美味いというだけでは無く、空間の力がその味をより引き立てていたはずです。
飲み物はコーヒーからお酒に変わりましたが、空間の質を考える題材は変わらずホテルオークラでした。そんな思い出の場所でもありました。

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都心の一等地に低密度で建てられているからこその豊かさは、大変貴重なものであり、それを保存したい気持ちももちろん理解できます。保存を望む声も沢山あるらしいですが、時代が変わり建て替えとなった訳ですから、ボクはその建て替えを肯定しても良いと思っています。当時のホテルオークラは帝国ホテルに負けないおもてなし空間をつくろうという気概を持ってつくられたと聞いたことがありますが、新しいオークラもそんな気概を持ってつくることが出来れば、きっとまた愛される建築物になるのではないでしょうか。

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5階のメインロービーに立ち、やはり愛される空間であると確認しがらお別れし、気概を持って設計活動してゆくことをあらためて誓ったそんな一日でした。扱う規模や用途は異なりますが、そんな思いを共有しながら愛される空間をつくってゆきたいと思います。

長谷部勉

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