2012年11月 6日

コミュニティの再考

藤村龍至氏が講師を務めるフォーラム「ソーシャル・アーキテクチャーとしての建築」を拝聴させていただいた。主催は法政大学デザイン工学部。全7回開催される予定の連続フォーラムのテーマは「コミュニティの再考」。藤村氏はRem Koolhaas氏の「S,M,L,XL」のように対象を分類し、意味をあえて問わず規模に還元して説明して行く。
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まずはS(住宅)。氏の設計手法の一つである「超線形プロセス」がクリストファー・アレグザンダーの「形の合成に関するノート」や魚の孵化過程の写真を引用しながら説明される。単純なカタチからスタートし徐々に形態を構築して行くのような建築のつくり方だ。またBuilding K(集合住宅)の事例を見せながら均質な風景をつくらないコトの利点、設備や構造をプロセスに取り込む方法についてもわかりやすく補足される。
続いて設計教育への応用(Mか?)。講評会等においてイイ×ワルイなどといった教員の価値観をベースに議論するコトのデメリットのハナシから、学生のモチベーション保ちながらボトムアップができるような教育方法論への応用について幾つかの実践が紹介される。氏の提供する写真に映し出される学生は確かに楽しそうだ!
フォーラム中盤では都市のハナシ(L?)に移行して行く。ルールだけが設定され、それに従って形態が決まって行く磯崎新氏の「孵化過程(1962)」から「海市(1997)」。そして複数のアーキテクトによる蓄積型のプロセスでつくられた藤村氏の「海市2.0(2011)」が紹介される。
さらに、ゲストがステークスホルダー、参加者はプランナーというルールの「横浜ハーバーシティスタディーズ2011」から、2週間に1回のパブリック・ミーティングを5回繰り返すという方法論を用いた「鶴ヶ島プロジェクト」へとつながる。
鶴ヶ島プロジェクトの参加者でもある経済学者の根本祐二氏の研究「朽ちるインフラ問題(1960+50)」のハナシは10月にもうかがったが衝撃的だった。ここでもシェアが切り口になりそうだ。今後建築の領域において小学校、中学校、公民館が重要になってくるだろうという藤村氏の批評性には信憑性がある。
最後はXL。社会問題を空間に例え、我が国を加工貿易の国にした田中角栄氏の著書「列島改造論」からスタートし、福島、埼玉、浜松、沖縄を結ぶ「問いの軸」をさらにアジアへ繋ぎ「希望の軸」に変える列島改造論2.0のとなる。日本が盟主になるかどうかはわからないが大東亜共栄圏が想起される。
万博型の都市開発は世界都市博の中止をもって終焉し、以降は大阪ステーションシティーのようなつくり方になるという仮説も大変共感できる内容だ。そして、「日本万博博覧会(1970)」と「大阪ステーションシティ(2011)」が同じ建築的ボキャブラリーでつくられているといったハナシも大変興味深く拝聴することができた。
一企業がつくった営業エリアの区分が、現在では経済圏の区分になっているJRのハナシから、分散して行くコトにより「建築」を基礎単位にした社会、コミュニティの下部構造をデザインする「ソーシャル・アーキテクトとしての建築」が今後ますます重要になるという予言をもってフォーラムのテーマである「コミュニティ再考」をまとめるなど。見事なレクチャーだった。
フォーラム終了後にはワンコインパーティ(ボクは5コインだったがw)が開催されたのでずうずうしく参加。パーティでは参加されていた学生に名刺を差し上げたのでさっそくお礼のメールをいただくなど。ありがとうございます。
このようなイベントに学生の内から積極的に参加出来ると視野が広がると思います。その後の懇親会には時間の都合で参加できませんでしたが、きっと盛り上がったはず。やはり建築は二次会からが本番なのかも知れない。
建築家の個人的なビジョンが社会に生かされるのは良いコトだと思うが、バブル期の建築家の傍若無人な振る舞いにうんざりしていたらしい氏のスタンスは常に明瞭でレクチャーはキレキレだった。
長谷部勉

投稿者 システム管理者 : 2012年11月 6日 22:27